リバーサイドにいます

引っ越した、という旨のブログを前回書いたら、各方面から「聞いてない」、「なぜ言わない」、「住所変更の連絡はよ」など、ご指摘、お叱りの声をいただいた私です。すみません。

 

今回も、引っ越した話から。

 

新居の名前(マンションなのか、アパートなのか)が「リバーサイド」という、何とも井上陽水感というか、ニューヨーク恋物語感というか、そういったものが拭い去れない感はあるのだけれど(いや、『ニューヨーク恋物語』をどれほどの人が知っているのか)。

 

もっと不可思議なのは、当「リバーサイド」の近くに川は流れていない、という点である。少なくとも、ぼくが思う「リバーサイド」とは大きくかけ離れた位置取りだったりする。

 

ひょっとして、大家さんが「川添」さんだったり、「横川」だったりするんじゃないかと期待したのだけれど、残念ながら「中川」さんだった。インザリバー。

 

その中川さんは、もつ焼き屋さんを営んでいる。ぼくは人の年齢が全く分からないマンなので、何とも言えないが、恐らく70歳は超えているんじゃないかと思う。聞けば、かれこれ40年以上、もつ焼き屋を経営しているのだという。

 

元々は肉屋の卸で勤めていたらしいのだけれど、もつ焼き屋に転身して「良かったよ」と話す。店には奥さまも一緒にいて、仲睦まじく店を営んでいる。

 

不確かなことは言えないが、中川さん、家賃収入もあるだろうし、別に働かなくても生計は立つんじゃなかろうか・・・と思うのだけれど、ほぼ毎日のように粛々と店を開け、もつ焼きを焼いている。

 

「FIRE」という言葉をご存じだろうか。ぼくは最近耳にした。

 

「FIRE」と言っても、スティービー・ワンダーの名曲(にして、缶コーヒー『FIRE』のCMソング)ではないし、『NARUTO』感のあるキツネのキャラクターのブラウザでもない(それはFirefox)。

 

「Financial Independence Retire Early」の頭文字をとって「FIRE」、まあ、色々定義はあるみたいだけれど、要は投資とか、不労所得的なものを得て、若いうちにリタイアできるようにしよーぜ的なことらしい。詳しいことは知らない。

 

セミリタイアと言えば、ぼくの世代で言えば大橋巨泉がパッと頭に浮かぶわけで、カナダのお土産物屋さんで財を成し、割とテレビ界でも人気がある間にリタイアしたのを覚えている。あ、この話は完全に余談である。

 

いわゆる「FIRE」を目指す人たちが、どういう想いや、考えを持っているのかはぼくは知らない。こちとら、FIREどころか家計がFIREのCARなわけで、そんなことを考えられるはずもない。

 

が。ぼくはここで中川さんのことを思い出す。中川さんが心中、何を思っているかはわからないし、中川さんの懐事情もぼくは知らない。だから、ぼくが思っていることも、実際には的外れである可能性もある。

 

でも思う。中川さんはひょっとしたら、もう働く必要なんてないかもしれないのに、今日も昼間から店にやってくる。そしてもつの串打ちをして、お客さんがやってくるのを待つ。

 

中川さんの店の周りには、今日もたれの焦げた甘じょっぱい匂いが流れ始める。

 

「働く」とは、何だろう。「仕事」とは、何だろう。

 

お金を得るだけが、仕事だろうか。経済的に自立さえすれば、仕事なんかしなくてもいいのだろうか。

 

ぼくは、中川さんが背中を丸めながら焼いてくれたもつ焼きを口に運びながら、そんなことを考える。

 

 

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