過去といまと未来と理想との関係について
先入観って、恐ろしいなあと思う。
唐突だけれども、KANをご存じだろうか。そう、シンガーソングライターのKAN、本名・木村和(かん)である。
たぶん、アラフォーあたりの人は「ああ、『愛は勝つ』の人だよね」と思ったはずだ。若い人は、ひょっとしたら全く知らないかもしれない。そして、ひょっとしたら「一発屋の人だよね」と思った人も多いかもしれない。
うん。確かに、ヒットチャートを賑わしたのは『愛は勝つ』だ。でも、KANさん(リスペクト)ファンのぼくに言わせれば、『愛は勝つ』は彼の意外な側面が出た一曲と言える。
彼の真髄は、明るくポップで楽しい応援歌を歌うことではなく、どちらかと言えばメロウで女々しい男心を、美しいメロディに載せて歌うところにある。
『永遠』、『まゆみ』、『1989(A Ballade of Bobby & Olivia) 』、『Song writer』、『君が好き、胸が痛い』。最近の楽曲だと『安息』も良い。ざっとこのあたりはぜひ聴いてみていただきたい。ぼくが言ってる意味が(特に文化系男子には)よくわかるはずだ。
できることなら、ぼく的青春時代に聞きまくったアルバム『TOKYO MAN』も、ぜひ皆さんに聴いていただきたい。未だに色褪せない名盤である。
そして、実はKANさん、それ以降もずっと音楽活動を続けている。というか、個人的にはそれ以降の方がよほど活躍している印象がある。
彼の音楽性は特に同じミュージシャンから高く評価されており、ミスチルの桜井さんはKANさんの曲を数多くカバーしているし、KANさんのアルバムにソングライティングで参加したりしている。また山崎まさよしとも親交が深く、「YAMA-KAN」名義でCDをリリースしてもいる。
ええと。ぼくは別にKANさん愛を声高に語りたいだけなわけではなくて(それもある)、それくらい、先入観や過去データで物事や人を見ると、いまを見誤りがちだと言いたいのだ。
○先入観や過去で今を見る
「あのときこうだった」とか「昔アイツはああだった」から、「いまでもそうに違いない」というのは、実はつながっていない。過去は単なる過去で、いま、あるいは未来とは関係がない。
「KANは『愛は勝つ』だけの一発屋」だと思い込んでいたら、いまのKANさんを正しく認識することはできない。
もう一つ例を出そう。何か月か前、駅前のラーメン屋に行ったらスープがぬるかったとする。でも、それはあくまで過去の出来事だ。ひょっとしたら、いまは厨房のバイトが変わって、アツアツを繰り出してくる可能性だってある。なのにぼくらは「あの店はスープがぬるいからなあ」と避ける。
つまり、いまがどうかではなく、過去どうだったかで判断している。もちろん、過去のデータは参考になるし、参照すべき場合もある。でも、過去といまは全く関係がないのに「これはこうだから」と自分が持っているデータで「いま」や「未来」を判断してしまう傾向にある。
同じことを、ぼくらは自分の人生でやってしまうことがある。これはもう、クセだし無意識だ。仕方がない部分はある。ぼくだってある。
でも、過去といま、あるいは未来(もう少し踏み込んで、理想と言っても良い)は、つながっているようで、実はつながっていない。過去のある時点で「A」だったことが、いまは「B」に変わっていることなんて、ゴロゴロある。
世の中の「常識」や「当たり前」だって、実はコロコロ変わっている。ぼくがタイムマシンに乗って、10年前のぼくに「10年後にはみんな小さな板みたいのを持って、それで漫画を読んだりテレビを見たり、リアルタイムでコメントのやり取りをしている」と言っても、たぶん信じない。むしろ信じられない。「スマートフォン」というものの情報が、10年前のぼくの中には全くないからだ。
○理想を描くのに、過去データ要ります?
過去を参考にしていまを見ることは、決して悪いことではない。過去起きたことは、繰り返す可能性が高いからだ。でも、それと自分の理想とは無関係だ。
自分の理想を描くとき、「前はこうだったから・・・」という情報を入れる必要は、ぼくはないと思っている。
いまを変えれば、未来は変わるとぼくは考えている。過去、何か望みではないことが起きたのならば、いま、それが起きないように(言い換えると、自分が望むことが起こるように)行動を変えればよろしい。それでこそ、未来が変わっていく。
ラーメン屋のスープがぬるかったのなら「ごめん、もうちょい熱くしてもらえる?」と言えば良い。そうすれば、未来は(たぶん)変わる。「いや、ぬるめのスープがウリなんで」と言われたら、初めてそこで決別すればいい(大げさ)。
先入観や常識、過去データ、固定観念といったものは、ぼくらの氣付かないところにくっ付いていることが多い。だからこそ、理想を見ていまを生きることを、ぼくは続けていきたいと思っている。
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