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わし流映画鑑賞録『ラ・ラ・ランド』

映画

■今回も、盛大にネタバレしますよ。

観る前は正直、期待してなかったわけです。『ラ・ラ・ランド』。

 

予告編を観ても、何となく(オレの苦手な)オトナのラブストーリー!的な感じだし、公開された後の映画評を見て「過去のミュージカル映画へのオマージュが!」とか言われても、オレ、そういうのほとんど観てないもんなぁ、と思ったり。

 

何しろ『ラ・ラ・ランド』て。なんというダサいタイトル、と思ってた。が、このタイトルには実は深い意味があった。これは後で触れます。

 

とにかく、観る前は期待してなかった。「まぁ、評判イイっぽいから」くらいの感じで観た。

 

結果、僕はこの作品を観て、2回泣いた。

 

■しつこいようですが、ネタバレしますんで。

ハリウッドで女優を目指すミアと、ジャズピアニストとして自分の店を持つことを夢見るセバスチャン。その二人が出会い、恋に落ち・・・というのが大筋。

 

単なるラブストーリーとしても観られるし、美しいミュージカルとしても観られる。様々な観方のある映画だなあと思う。

 

ミアは、とにかくオーディションに落ちまくる。セバスチャンは演奏こそ上手いけど、雇われてた店の選曲に従わず、クビになる。とにかく、二人とも上手く行ってない状況で出会う。

 

そして(映画としては当然ながら)徐々に成功への道が開けてくる。

 

そして、ミアに大チャンスのオーディションが訪れる。大作の映画に出演できるかも、というオーディション。「自由に演じて」というオーダーに対して、女優だった叔母さんのことを思い出しながら、ミアが歌う『The fools who dream』という曲が素晴らしい。オレが泣いた第一ポイントがココ。

 

■ちょっと脱線しますね。

「ミュージカルが苦手」という人がよく言う、「なんで急に歌い出すのか」という疑問。僕は「映像を使った比喩表現」だと思うことにしています。

 

その時の心情や感情を歌にして表現する。実際に何が起きてるか、というよりは、そういう氣持ちでいるんだな、という。

 

だから、実際にミアがオーディションで歌ったかどうか、は、どうでもいい(と、私は思っている)。彼女の心境、信条、あるいはもう一歩推し進めてしまえば、監督が言いたいことがここに込められている。それで良いじゃないか、と思う。

 

この作品では、いきなり歌いだす以上に「あり得ない」行動や出来事が多々起こる。それを「こんなことあり得ない!」と観るのか「面白い!」と観るのか。でも、これだけの人が評価してるってことは、そのあたりはクリアしてるのかもね、とも思う。

 

はい。脱線おしまい。

 

■『The fools who dream』

 

www.youtube.com

 

ミア(エマ・“目玉”・ストーン)が歌うこの曲がとても良い。歌詞も曲も歌唱も、歌われるシチュエーションも。

 

ちょっとだけ歌詞を引用しますね。

Here's to the ones who dream
Foolish, as they may seem
Here's to the hearts that ache
Here's to the mess we make

 

(わし流ざっくり翻訳)
「夢を見る人たちに乾杯しましょう。
たとえ、どんなに馬鹿みたいに見えたとしても。
痛む心と、私たちのむちゃくちゃな日々にも、
乾杯しましょう」

 

She told me:
A bit of madness is key
to give us new colors to see
Who knows where it will lead us?
And that’s why they need us,
So bring on the rebels
The ripples from pebbles
The painters, and poets, and plays

 

(わし流ざっくり翻訳)

「彼女(ミアの叔母さんのことね)は言った。

ちょっとした狂気が、私たちの世界に彩りを与えてくれる。

それが私たちをどこに連れていくかは、誰も知らない。

でも、それこそが私たちが求められている理由。

だから、小石が波紋を広げるように、

反逆者たちを舞台に上げるの。

画家や、詩人や、劇作家たちのような(社会に対する?)反逆者を。

 

なお、もっとちゃんとした翻訳があったから、詳しくはこっちを観てもらった方が(笑)。

 

migmemo.net

 

ミアはそれまで、女優を目指してオーディションを受けまくったけど落ちまくって、実は一度実家に帰るんです。そこを、セバスティアンが迎えに来る。「君には絶対才能がある。だから、次のオーディションを受けよう」と。んで、この曲を歌う流れなの。

 

■「Where we are?」という問い

これは、何かを目指して、何かに憧れて、何かを夢見た人ならば泣くよりほかないシーンですよ。真剣に。

 

そして、オーディション後にミアはセバスティアンにこう質問する。

 

「Where we are?」と。字幕ではどうなってたかな、忘れた。その問いに対し、セバスティアンは一旦「公園だよ」と答える。で、もう一度ミアは「where we are?」と問う。

 

なんかこう、この問いが印象的でして。

 

二人が「(人生という道において)どこにいるのか」もそうだし、「(夢の過程において)どこにいるのか」もそうなんじゃないかとか。そして、物理的に「パリか、ハリウッド(ロサンゼルス)か」も含まれてるかもしれない。ひょっとすると、「二人はどこへ行こうとしているのか?」という問いなのかもしれないし。

 

何を目指し、何に価値を置き、どこに住み、誰と暮らし、何をして生きるのか。それら全てをひっくるめた「Where we are?」という問い、なのかなとか。

 

結果、ミアはこのオーディションに合格し、パリで大作映画に出演することになる。セバスティアンはセバスティアンで、ツアーで世界を飛び回る。かくて二人は離れ離れになることを選択する。

 

そう。二人の夢は叶う一方で、二人の距離は離れていくわけだ。「己がどこにいるか」を確認しながら。

 

■ある意味、2つのラストシーン

んで、このあたりからラストへのなだれ込みがすごい。

 

時間は5年後に飛ぶ。ミアは女優として成功し、ハリウッドに戻ってくる。愛する夫と子どももおり、幸せに暮らしている。そして、夫と食事でもしようかと入った店が、何とセバスティアンの店。

 

そして、セバスティアンはミアに気付く。彼の奏でる曲に乗せて、映画はクライマックスを迎える。「あり得たかもしれない現在」、つまり、二人が幸せに結ばれた「アナザーストーリー」を見せる。

 

これがもう、あーた。泣いた。オレが泣いた第二ポイント。現実は「そうではない」のだけれど、実際にあり得たかもしれない「現在」を走馬灯のように見せていく。でも、それはどこまで行っても「そうではない世界」の話。ミアとセバスティアンがどんなに幸せで、温かな家庭を築き、幸せに生きていたとしても、それは「あり得たかもしれない」世界。

 

そうこうして、我々は現実に戻ってくる。ミアは夫と店を出る。セバスティアンは、あたかも「それで良いんだよ」と言わんばかりに微笑んで、次の曲を演奏し始める。

 

いやもう。このエンディングはズルいよ。ズルい。

 

■で、『La La Land』に込められた真意

『ラ・ラ・ランド』を英語で書くと『La La Land』。LA、つまりロサンゼルスのことを言うらしいのです。ただ、何というか、夢見がちな世界を指してる、というか。そんなことを映画評論家の町山智浩さんが紹介していたんですわ。

 

その部分だけ引用します(今回の記事は長いなー)。

 

『ラ・ラ・ランド』というのは『La La Land』と書くんですよ。「LA」っていうのはロサンゼルスのことですよね? だからロサンゼルスのことを別名「ラ・ラ・ランド」とも言うんですね。

(中略)

ただね、これには悪い意味みたいなのがあるんですよ。つまり、ロサンゼルスに住んでいる人たちはみんなこの主人公たちみたいにスターになる夢を見ているんですよ。で、「彼女はラ・ラ・ランドに住んでいるんだ」っていうのはね、「彼女は夢見がちなんだ。現実を見ていないんだ」っていう意味があるんですよ。

 

 

miyearnzzlabo.com

 

つまり、「デートの時に見に行くと良い映画っすよ、ダンナ」的な顔をしてるこの映画ですけども、実は「何者かになりたいと願い、夢見続ける(続けた)人への賛歌」なのですよ!(バンバン←机をたたく音)。

 

もう一度言うけれど、この映画はホントに色々な観方ができる。

 

単に、音楽と映像が楽しい映画、としても観られる。かくいう僕も、この映画を観てしばらく、劇中の音楽を鼻歌で歌ったり、口笛を吹いてたりする自分がいてびっくりしているくらい。

 

そして、恋愛悲劇としても観られる。ああ、なんであの二人は別れなくてはいけなかったの?あたしたちはそんなことないわよね的に、カポーで観るのも良いでしょう。

 

ただ僕は、何度も言うようだけれど、何かに憧れ、何かに夢を見た人たちへの賛歌であり、そういう人たちへの愛を込めた映画だと思う。「アカデミー賞狙いが透けて見える」てな指摘もあるみたいだけど、それはちょっと、さすがに意地悪過ぎやしないかとも思う。意識はしたかもしれないけれど。

 

とにかく。ミュージカルがどうしても嫌いな方には勧めませんが、そうでなければぜひ。

 

特に「ラ・ラ・ランド」の住人だったという自覚がある人は。