わし流映画鑑賞録「沈黙ーsilenceー」

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■映画観てきましたんで。

今回の映画評は「沈黙ーsilenceー」です。マーティン・スコセッシ監督作品ですね。

 

chinmoku.jp

 

前にも書いたかもしれませんが、僕は決して映画通ではないです。別に映画の見方を勉強したこともないし。まあ、言わばフツーのおじさんです。

 

逆に、フツーのおじさんの映画評なんて読む機会がないはずなので、ぜひご参考になさってください(ほんとかよ)。

 

遠藤周作の小説を映画化

さて。この作品は遠藤周作原作の小説をスコセッシ監督が映画化したもの。キリスト教弾圧が厳しかった、鎖国中の長崎が舞台です。

 

ごく簡単にストーリーを紹介しますと、ポルトガルから日本に渡ったある敬虔な司祭が、棄教したらしい。この噂を聞いた若き司祭二人が、師匠の後を追って日本に渡る。そこで二人が見たものは・・・的な内容です。

 

こういう話だけに、キリスト教と日本の関係、神とは何か、宗教とは何か、救いとは?というようなことがテーマになります。

 

あ、ここからは壮大にネタバレしていきますので、見る予定の方はご承知おきを。

 

■ともかく静か。

この映画を見た人の多くが指摘するのが、「音楽」の少なさ。ほんとに、ほとんど音楽らしきものが流れない。テーマがテーマなので、パンパカパーンみたいな音楽が鳴るのもおかしいのですが、それにしても。

 

印象に残っている「音楽」といえば、殉教していく隠れキリシタン(モキチ)が歌う賛美歌くらいなもの。

 

しかし、その静けさというか、音楽のなさがまた、映画に緊張感をもたらしており。

 

■そしてエグい。

あのー、こんなエグい話でしたっけ?というくらい、エグい表現が頻出する。まあ、キリシタンを拷問にかけたりするシーンがあるわけで、当然そうなんですけども。にしてもエグい。絵的にもだけど、精神的にも、かなり来る。

 

前出のモキチが死ぬシーン、あるいはジュアン(洗礼名ね)やガルペ(こちらは司祭の後を追ってきた教え子の一人)が死ぬシーンも、精神的にかなりダメージが大きい。

 

ちょっとびっくりする描写も多いので、そういうのがニガテな方は要注意かも。

 

■それよりなにより、キチジロー。

でも、この映画を観た人はたぶん、この人について言及せざるを得ない、というくらいのキーパーソン、それがキチジロー。

 

この人、観れば分かるけど、まあ、何というか。

 

他の隠れキリシタンたちが信仰を棄てず、勇敢に(と言おうか何と言うか)殉教していく一方で、キチジローは何度も「踏み絵」(行為の方は「絵踏み」というらしいですね)をする。

 

挙げ句の果てには、同行していた若き司祭を幕府のお奉行様に密告し、売り飛ばす(司祭がいることを密告すると、銀300枚もらえたらしいですよ)。

 

で、もうキリスト教とは縁を切るのかと思いきや、司祭の後をつけ回して「パードレ(司祭様)!コンヒサン(告白)を!」と、罪の告白をして救われようとする。

 

■救いとは何か。

いやもう、観ててほんとに、コイツスゴいなと。劇中、キチジローは何度も何度も人や神さまを裏切る。かといって完全に信仰を棄てるわけでもない。そして、何度も何度も同じように、救いを求め続ける。

 

でもよ、と映画を見終わってしばらくした後、僕は思ったのです。

 

誰がキチジローを笑えるのかと。

 

彼を臆病者、卑怯者と言うのは簡単。でも、ああいう過酷なシチュエーションに立たされたとき、自分はキチジローのように振る舞うことはない、と言い切れるか。モキチのごとく、敢然と恐怖や死に立ち向かえると、自信を持って言えるのか。

 

 

■人間弱いし、流されるし。

人間弱いし、流されることもある。強く生きたいと思っても、ままならないこともある。同じ失敗や過ちを、何度も繰り返すこともある。

 

そういう人のことを「ダメなやつ」、「弱いヤツ」と切り捨てるのは簡単。でも、それで本当に良いのか?と。それは、現代社会でも同じこと。

 

何でもかんでも許す(あるいは赦す)ことが良いことなのか。でも、弱い人に手を差し伸べ、共に歩むことも必要なんじゃないのか。

 

ひょっとしたら、そんなことは神さまマターで、我々人間は「コイツはダメ、使えない」と切り捨てて良い、という意見もあるかもしれない。

 

でも、どうだろうか。僕個人としては、そういう弱い人、ある意味ナサケナイ人にも寄り添える人でありたい。何故ならば。僕自身がそういう弱く、ナサケナイ人だから。実際にできてるかどうかは、置いておくとしても。

 

そして、「救い」とは何か。罪を告白すれば救われるのか?果たして、キチジローは救われたのか。とかとか、色々考えてしまいました。

 

宗教のことはよくわからないので、そのあたりについては言及しませんが、とにかく、重たい映画でした。

 

一つだけ言えることは、デートで見に行かない方が良い、ということ。長いし。観終わった後、会話に困ること受け合いです。