極私的『海よりもまだ深く』観賞録
先に申し上げておきますが、この観賞録は、映画評としては屁のつっぱりにもなりませんし、ムダにネタバレ(というのかな)する可能性もあります。
それでも良ければ、ぜひどぞー。
■映画を観た後に
私は離れて暮らす母親に電話しました。と書くと、 出来過ぎな感じですが。ま、用事があったからなんですけどね。
母はいつも通り母でした。当たり前ですが。めったに連絡を寄越さず、好き勝手に生きている息子にイヤミを言いつつ、「アンタが楽しく生きてるんなら、それでいい」とも言う。
『海よりもまだ深く』では、 主人公の母親を樹木希林が演じています。この樹木希林を観ていて、もう、どうしようもなく、うちの母親を思い出してしまい。
■決して似ている訳ではない
表面的には、全く似てないのです。ウチの母と『海よりも~』の主人公の母親は。
ウチの母はプリンのビンを取っておいたりしないし、カルピスを凍らせてアイスを作ったりもしない。『海よりも~』の母親ほどは息子に甘くないし、義理の娘にも優しくはない(笑)。
でもねぇ。なんというか、老いて、 考えたくはないけど死んでいくんだなあ、ということを痛切に感じたのですよ。
そして、私は母や父に何をしてきただろう。たくさんのものをもらって、どれだけ返すことが出来ただろう。そんなことを感じて。
私は『海よりも~』の主人公ほどカネに困ってる訳でもないし、離婚もしていない(笑)。考えようによっちゃ、まあ自立はしている。でも、母や家族に対して愛を送ってきたのかと言われると、呆然とするしかないわけです。
■こんなはずじゃなかった人生を生きる
ホント、「こんなはずじゃなかった」こともたくさんあるわけです。私の人生だって。そこそこイイ感じだとは思っているけれど、「こんなはずじゃなかった」と思うこともある。
それは、父や母に対してもそう。愛や恩を返したいと思うなら、今からだって遅くはない。なのに、動かない。動けない。でも、どっちの気持ちにも、嘘はない。
きっと『海よりも~』の主人公もそうなはずで、母や元妻、息子に対して、もっとこうしてあげたいと思うのに、出来ずにいる。それはプライドなのか、面倒なだけなのか、気付かないからなのか。
でも、それもまた人生なのかもしれず。
そして、 エンディングテーマとして、ハナレグミが歌うわけです。
「夢みた未来って、どんなだっけな
さよなら 昨日のぼくよ
見上げた空に飛行機雲
ぼくはどこへかえろうかな」
(ハナレグミ『深呼吸』)
昨日のぼくに、さよならを。
そして。明日のぼくよ、こんにちは。